2018春_vol44
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穏やかな陽気に包まれる春は、散歩にうってつけの季節。梅や桜といった春の花々を眺めに訪れる人が多いことだろう。その一方で、視線を足元に向けて楽しむ人も。「マンホール」が今、日本人だけでなく海外の観光客からも注目を集めているのをご存知だろうか。そもそもマンホールとは、下水道の点検や修理などの際に作業員が出入りするための穴。地域によってその蓋のデザインが異なるのが魅力だ。誰しも一度くらいは、旅先でその土地特有のデザインが施されたマンホールを見たことがあるだろう。例えば、静岡県富士市の「富士山」や、大阪府大阪市の「大阪城」、岡山県岡山市の「桃太郎」など、その土地の名所や関係の深いものが描かれたマンホールが全国各地に存在している。ゆるキャラや名産品、歴史的な事柄など、デザインに用いられるモチーフは多岐にわたり、その数は1万種類を超えると言われている。SNSが広く普及したこともあり、様々な絵柄のマンホールを写真に収めて楽しむ人も少なくない。数年前には、“マンホール女子”と呼ばれるマンホールをこよなく愛する女性ファンも話題となった。最近では、マンホール好きをまとめて“マンホーラー”と呼ぶことも。そんなマンホールにまつわる新たな取り組みが、更なる反響を呼んでいる。それが、GKP(下水道広報プラットホーム)によって2016年4月から配布され始めた「マンホールカード」だ。全国の配布場所に足を運ぶと無料で手に入るカードで、その地域に設置されているマンホールの写真やデザインの由来などが書かれている。国土交通省が2007年に配布を開始した「ダムカード」のように、そのマンホールがある街を訪れなければ手に入らない仕様がコレクター心をくすぐる。現在では、200種類以上が配布されているマンホールカードを集めるために、日本中を旅するファンも増えているようだ。このカードを仕掛けたGKPは、元々2012年に下水道のイメージアップのために組織づくられた団体。人々の生活を足元から支えているにも関わらず、余り好ましい印象を持たれていなかった下水道をより身近に、より重要な存在として認識してもらうための活動を行っている。そんな中で、生活に馴染み深く、自治体によって異なる蓋のデザインの豊富さもあり、マンホールに着目することになったという。GKPではカードの配布だけでなく、関係者の登壇やグッズの販売を行うマンホールサミットの開催などの取り組みも行っており、コレクションの的やアートの一つとしての知名度アップに貢献している。また、マンホールの面白さは絵柄の多さやカードの収集だけではない。マンホールの蓋は、それが作られた時代を現在に残すものでもある。今では無くなってしまった会社のロゴや団体のシンボルマークなどが、マンホールにはそのまま現存しているのだ。普段何気なくその上を通っているマンホールに、旧時代の残り香が存在しているとはなんとも興味深い。フォトジェニックなものとして、そ      して歴史的背景を持つものとして、あらゆる面から話題となっているマンホール。この春の散歩道では、頭上の花を見つめるだけでなく、足元の蓋にも注目して欲しい。その魅力はデザイン以外にも“旅びと”が目に留めた景色や場所、もの、人に注目するコラム。今回は、デザインも魅力の「マンホール」にフォーカス。旅びとよ的広がるマンホール人気足元に注目!マンホール10

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