2018夏_vol45
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〝お父さんの味〟きゅうりもみ夏野菜がおいしい季節になった。この季節にしか作らない得意料理がある。〝きゅうりもみ〟薄く切ったきゅうりに塩をかけてもむ、ただそれだけのもの。だけどメチャクチャうまい。好き嫌いの激しい大学生の娘も、喜んで食べてくれる。夜に作って冷蔵庫で寝かせてあげると朝に食べ頃となる。忙しい朝、子供達が大きくなると、みんなで一緒に朝食をということも難しくなった。でも、娘の出掛けた後、そっと冷蔵庫を覗いてみると〝きゅうりもみ〟がなくなっている。そんな時はメチャクチャ嬉しい。   〝お母さんの味〟もいいけれど、〝お父さんの味〟っていうのがあるのもいい。実際、僕には〝お父さんの味〟っていうのがあって、キャベツをソースで炒めただけのものと、もうひとつが今自分も作っている〝きゅうりもみ〟なのだ。トントンとリズムを刻んで実に上手にきゅうりを同じ薄さで切っていく。見ていて格好いいなぁと子供心に思っていた。今では一年中手に入るが、夏の旬の季節しか作ってくれない。「本当にきゅうりがおいしい季節じゃなかったら、おいしくないからね。それぞれが持っている本当の味、旬の味をわかる人になって欲しいから。」今、自分が父親になって、大きくなった子供達に伝えられること。それは〝本物を見極められる力〟を養うこと。今、巷には偽りものが多く出まわっている、人も物も。それをしっかり見極めて欲しいと願っている。撮影:林家たい平 林家たい平1964年、埼玉県秩父市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。2004年からNTV「笑点」のメンバーとなり、お茶の間で人気に。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2016年、NTV『24時間テレビ39愛は地球を救う』でチャリティマラソンランナーに抜擢されるなどTV出演も多数。今後の落語界を担う、今最も注目を浴びる落語家。林家たい平のVol.1921

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