2018秋_vol46
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旅びとよ的「名画座」とは“旅びと”が目に留めた景色や場所、もの、人に注目するコラム。今回は、味わい深い「名画座」にスポットを当てて紹介する。おすすめの映画館今、あえて行きたい名画座身近なエンターテインメントとして幅広い世代に親しまれている映画。それを取り巻く環境は、時代と共にさまざまな進化を遂げてきた。1990年代に複数のスクリーンを持つシネマコンプレックスが登場し、設備のデジタル化と共に3D、4D映画といったエンタメ性の高い映画が脚光を浴びた。しかし、DVD・ブルーレイの普及、最近では有料動画サービスの浸透もあり、映画館以外で映画を楽しむ選択肢が増えているのも事実。そんな中でも、あえて注目したいのが「名画座」。そうした呼び名も今はあまり聞かれなくなったが、旧作映画を主に上映する映画館の総称である。過去に同じ作品を映画館で観た人にとっては、その当時の思い出が蘇る大切な空間。一方で、名画座を訪れ、その作品を初めて観た人にとっては新たな発見の場にもなり得るだろう。街に古くから根付いている名物のような映画館も年々減少しているが、全国にはまだまだ素晴らしい名画座が存在している。若い世代にとっては特に聞き慣れない場所かもしれないが、ぜひ一度その魅力にふれてほしい。新作上映はないものの、少し前の作       品や今ではあまりスクリーンで観られない貴重な作品が上映されるという特別感、そして多くが歴史を感じるレトロな佇まいというのが名画座の特徴。ここでは、いくつかの映画館を紹介したい。まず、東京で主要な名画座といえば「早稲田松竹」。新旧洋邦問わず、良質な作品を監督や俳優、テーマなどの共通点を持った2本立て作品として編成。「好きな映画だけを楽しめる時代に、全く知らなかった素敵な作品との出会いの場になれば、この名画座の価値があるのでは」とスタッフの岩本さんは話す。途中外出が自由だが、あまりの居心地の良さに1日中ここで過ごす人や学生時代から通う年配の常連客も多い。1911(明治44)年に芝居小屋として開業し、今では日本最古級の映画館として知られるのが、新潟県にある「高田世界館」。世界各国の映画作品やドキュメンタリーなど、通好みのラインナップが揃う。建物の老朽化や経営難により一度は閉館したものの、現在はNPO法人「街なか映画館再生委員会」によって運営されている。国の登録有形文化財や近代化産業遺産にも指定されている建築が素晴らしく、その空間がつくり出す非日常感が、映画と共に別世界へと誘ってくれるのだ。最後は、こちらも100年以上の歴史を誇る長野県の「上田映劇」。映画『青天の霹靂』などのロケ地としても有名。雰囲気は名画座のような趣があるが、国内外の良質な新作映画を上映しており、地元の人々に親しまれている。建設当時からの名残である「舞台」や現在日本で唯一といわれる「格天井」があるのが特徴。映画を鑑賞すると、手掘りのオリジナルスタンプがもらえるのも嬉しい。いろいろな映画館を訪ねると、そこならではの個性や工夫があり、映画が息づく街の文化を愛でる人々の温かい思いが伝わってくる。鑑賞だけにとどまらない魅力溢れる名画座が、秋の休日を特別なひとときにしてくれるかもしれない。12

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