2019春_vol48
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   アメリカのライト兄弟が、本格的な有人飛行を行ったのが1903年12月。それから115年以上が経ち、今の世界の空を飛ぶ無数の飛行機を、ライト兄弟は想像しただろうか。東京オリンピック生まれの私でさえ、まだまだ飛行機に乗れる人は大金持ちか、特別な人だと思っていた。小学6年の時に埼玉の田舎に住む私達は『東京めぐり』という課外授業があって羽田空港に連れて行かれた。空港の屋上から、金網越しに見た大きな飛行機はあこがれの乗り物だった。初めて飛行機に乗ったのは落語家になってから。師匠のお供で乗ることになった私に兄弟子はおもしろがって「飛行機に乗る時には靴を脱ぐこと。機内で使った毛布はおみやげに持って帰ってこられるから」等、ウソを教えて楽しんでいたが、私は真剣だった。靴を脱ごうとしている私を見て師匠が笑いながら止めてくれた。そんな師匠も飛行機が苦手なのか、離陸の時には目をつむり、祈るような顔をしている。五十四才になった今でも、こんな大きなものが空を飛ぶのが信じられないでいる私。しかしひと度、雲の上に出ると、見たこともないような風景、光景に出会わせてくれる。最近は機内モードならOKということで写真を撮って感動を共有することもできるようになった。でもしみじみ思う。昔は神様しか見られなかった景色を見せてもらえる人間は、いつまでも驕らず謙虚でいなければいけないと。雲の上でふと思うこと撮影:林家たい平林家たい平1964年、埼玉県秩父市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。2004年からNTV「笑点」のメンバーとなり、お茶の間で人気に。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2016年、NTV『24時間テレビ39愛は地球を救う』でチャリティマラソンランナーに抜擢されるなどTV出演も多数。今後の落語界を担う、今最も注目を浴びる落語家。林家たい平のVol.2221

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