Vol.49
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いつかあの場所の、あの空気を吸ってみたいと思っていた。なかなか叶わなかった夢が去年の夏、ついに実現した。熱いドラマが数々生まれた甲子園球場。息子が通う学校が出場することになった。抽選で決まる対戦スケジュール、祈る気持ちで見守った。なんとピンポイントで、夏休みと決めていた一日と重なった。これは甲子園の神が呼んでいると勝手に思い、行くことを決意。前日の仕事終りで球場近くまで移動。開場と同時に観客席になだれ込む。まぶしく輝く銀傘の下、球場全体が見渡せる席に陣取った。      第一試合から好カードが続くこの日は、朝から満員御礼。前日、応援の為に野球帽とメガホンを手作りし、準備万端。試合前の練習風景、グラウンド整備員の無駄のない動き、丁寧な作業からは、ここでみんなが輝けるようにという想いが感じ取れて、それだけで目頭が熱くなった。グラウンドと観客席が一つになって、一球一球を追う。そこには敵も味方もなく、全力プレーに惜しみなく拍手が贈られる。気が遠くなるような暑さのなか、かちわり氷に救われながら、不覚にも何度となく涙を流してしまった。若さの力、可能性、喜びを分かちあえる仲間。気が付くと4試合全てを観戦、照明塔に灯がともっていた。何かのキッカケがなかったら来られなかっただろう場所に私を連れて来てくれたのは子供が結んでくれた縁。子供のお蔭で親は、色んな経験を積んで、成長させてもらっている。神様が呼んでくれた最高の夏休み撮影:林家たい平林家たい平1964年、埼玉県秩父市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。2004年からNTV「笑点」のメンバーとなり、お茶の間で人気に。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2016年、NTV『24時間テレビ39愛は地球を救う』でチャリティマラソンランナーに抜擢されるなどTV出演も多数。今後の落語界を担う、今最も注目を浴びる落語家。21林家たい平のVol.23

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