Vol.49
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―本日はよろしくお願いします!現在は長野県にお住まいとのことですが、活動の基盤もそちらですか?●スキー界の現実と課題はい、長野市です。現在は、北野建設スキー部の選手指導が専らの仕事で、その他は講演活動をさせていただいています。また、長野県の教育委員を務めているので月に1回の会議や視察、懇談会なども出席していますが、基本的には選手を見ていますね。―若手のスキー選手が活躍していますが、荻原さんの現役時代と比べて異なる部分はありますか?スポーツや競技に対する基本的な考え方は私が今見ている渡部くん(渡部暁斗選手)も変わらない。非常にストイックで、むしろ渡部くんの方が自分の現役時代よりよっぽどスキーに賭けているし、一生懸命さを感じますね。私は適当だったので…(笑)。彼は、簡単に言うと指導の必要がない選手。自分で計画してトレーニングしているので、私がやっていることはサポーターに近いんです。―技術面の指導やアドバイスをすることは?もちろん、私なりに伝えることはありますが、彼自身の考え方や哲学のようなものがあるので、そこに全身全霊をかけてやってもらいたいなと思います。彼はスキーと対話しながら、創意工夫をしてノルディックコンバインド(複合)というのを作っているので、彼が没頭している状態から気持ちがそれることのないように、こちらがうまくサポートするイメージ。さらに言うと、そういうアスリートじゃないと世界のトップを取る選手にはなれないんです。―将来有望な選手が台頭している今の状況をどう感じていらっしゃいますか?有望っていうより渡部くんは既に私を超えているアスリートだと思うので尊敬しています。最近では小林陵りう侑選手もいますし、日本人もやれるんだっていう元気をもらえますよね。でも、だからといって子供達の関心が大きくなるわけでもない。スキー場のある山間地域は都市部に比べて人口も少なくなっていますし、渡部くんや小林くんみたいな選手が活躍しても「ジャンプって面白い、自分もやってみよう」となる子は稀なんです。これはスキー界的に言うと大きな問題。―それに対して啓蒙活動などはされているのですか?北野建設では今までトップアスリートの育成しかやってきていませんでしたが、近々にも子供達のスキージャンプ体験会がありますし、私自身ジュニアの育成に力を入れたいと思っています。渡部くんの気持ちを代弁するわけじゃないんですけど、2014年のソチで銀メダルを獲得して、世の中の関心が高まると思っていたのに現実は違った。それから、彼自身も発信する必要があると感じて、今まで受けていなかった取材も対応するようになりました。子供のジュニアスキー体験会などにも積極的に参加してくれています。ょうゆ今回のゲストは元スキー選手でアルベールビル、リレハンメルオリンピックのノルディック複合団体・金メダリストの荻原健司さん。さまざまな偉業達成から「キング・オブ・スキー」と称された彼の半生を振り返り、味わった栄光と挫折、そして今後への思いについて伺いました。元スキー・ノルディック複合選手10vol.15荻原 健司個人の金メダリストを    育てるのが夢

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